私が新卒入社したIT系ベンチャー企業は長時間残業が当たり前のブラック企業でした。
ブラック企業の新人研修では、外の様子が分からないことと、忙しさで正常な判断ができなくなることで、自分の会社がブラック企業と気づくことができずどんどん洗脳されていきます。
これから就職する人や、今忙しい会社で働いている人がブラック企業の新人研修での体験談を読むことで、自身の会社がブラック企業なのかを判断する材料にしていただければと思います。
私が新人研修をうけたブラック企業について
私が新卒入社した会社は社員数200人のベンチャー企業。社員はほとんど35歳以下で活気があり仲良しサークルのような雰囲気でした。
入社前説明会で先輩社員が口々に、
この会社の社員は人柄が良い
忙しいけど、絶対に成長する
文系からでも一流のエンジニアになれる
と言っているのを見て、ここで働けば実力がつくし楽しそうだと思い入社を決めました。
入社前の私は「忙しい」という先輩の言葉を軽く考えていました。そして入社し自分が残業するようになって、想像を超える長時間残業が常態化していることにようやく気がつくのです。
この会社に消灯時間はありません。毎日24時をまわっても働き続ける人がおり、社内には三徹を越えゾンビと化した社員が歩いていました。酷い人では残業月200時間を超えても働き続けていました。
ブラック企業の新人研修の始まり
私の会社には3ヶ月の新人研修がありました。新人研修の内容は、プログラミング初心者に向けてITの基礎を教えるものでした。
私のこれまでの経験は大学のレポートを作るためにパソコンを使うだけ。プログラミングなど一度もやったことはありませんでした。周りの同期も同じような状態で安心したのを覚えています。
はじめの1ヶ月の課題はITの用語を覚えて空欄を埋める、一問一答形式でした。内容も難しくなかったので毎日定時前に課題を解き終わりました。私は家に帰ってからも明日は何を習うんだろうとワクワクしながら今日習ったことの復習をしていました。
ブラック企業の新人研修の難易度は突然上がる
新人研修が2ヶ月目に入ると、プログラミング研修が始まり1時間ほどの講義を受けました。
講義では、先輩が作ったシューティングゲームを見せてもらい、どこにプログラムが書かれているかと、どのソフトを使えば作れるのかを教えてもらいました。
そして課題が出されます。
このプログラムを参考にして2日間でゲームを作ってください
明らかに無茶な課題でした。それまで新人研修で習っていたのは、基礎的な内容や専門用語の意味。どうやって手をつけて良いのかすらわかりません。
1日の終わりに進捗教えて!あとは分からないことあったら聞いてねー
と言って先輩社員は立ち去り、残業地獄の研修が始まったのです。
とにかく手のつけ方が分からず、先輩のゲームを真似してなにかを作ろうとするのですが、2000行以上も書かれた呪文のようなプログラムの解読が進みません。
夕方の6時をむかえやっとできたのはキャラクターのアイコンと背景画像と表示させる部分だけ。
進捗は新人全員の前で先輩に発表する形式でした。同期社員のうち3人程度は少し形になっていましたが、他の同期は私と同じくあまり進んでいませんでした。進捗が悪い同期に対して、先輩は次々に厳しい言葉を投げかけます。
こんなに進んでいないと思わなかった。
これだと絶対明日までに終わらないよ。
この時間なにしてたの?どこに時間を使ったの?
どうやってこの遅れを取り戻すの?
新人研修の初めに研修中は残業代を出さないと説明されていました。それでも自分が「できていない」側にたったこと、そして何よりこれまで優しかった先輩をガッカリさせたことがショックで、私たちは迷わず
残業して遅れを取り戻します
と答えました。
ブラック企業の新人研修ではだれも帰らないから帰れない
しかし残ったからといって急にスキルがあがるわけでもなく時間は過ぎています。
私は先輩が帰るまでのつもりで作業を進めました。しかし8時になっても9時になっても先輩は帰りません。同期もだれも部屋から出ず黙々と作業を続けていました。
そうして10時になった時に先輩が新人研修の作業部屋に来て進捗を確認し始めました。
私たちの作業はやはりあまり進んでいませんでしたが、先輩は
頑張ったね、進んでるね!
と言ってくれました。少し安心した私たちはようやく家に帰ることができました。
次の日はゲームの発表日でした。同期のほとんどはゲームと呼べない状態なのに社長を含めた先輩社員の前で発表することになりました。
新入社員の私たちの発表中、先輩たちはなにも言わずに聞いていました。そして全員の発表終わった時、重役についている社員がこう言いました。
この状態になるって研修担当はなにしてるの?
研修を担当していた社員が私たちの前で怒られているのを見て、新入社員の私たちも
自分のせいで先輩が怒られている
と縮こまりました。
ブラック企業の新人研修はさらに難しくなる
そこからの新人研修の課題はさらに難しくなりました。
簡単な説明だけを聞いてなにかを作る流れは変わらずですが、課題の規模は大きくなり1週間から2週間をかけて1つのものを作るようになりました。取り組んだのは
データベースを組み込んだアプリの開発
通信連携するソフトの開発
一番難しかったのは
なんでも良いからロボットを作れ
というものでした。
最初の研修で、定時で帰ると課題が終わらない、終わらなければ先輩にも迷惑がかかると知った私たちは常に残業するようになっていました。
それでも課題は終わらないので発表日の直前は自主的に徹夜を重ねました。
新人研修の終わりとブラック企業戦士の誕生
残業時間の記録を行なっていませんでしたが、おそらく月80時間を超える残業をしていたと思います。
新人研修を終えたとき、先輩から
これからもっと辛いことがあると思いますが、この研修を乗り越えられたのだから大丈夫。これからよろしくお願いします
と言われたことを覚えています。
自分の失敗により他人に迷惑がかかるという連帯感の中で、叱責やつき放しのあと優しく褒め言葉をもらう環境で長期間すごすことで、私たちは残業代をもらえなくても当たり前、残業が長くても当たり前なんだと思うようになりました。
新人研修でブラック企業かもと思ったら
私は3年目を迎える前に転職をしました。
同期や先輩からは
辞めるのは逃げ
ここで通用しない人は他に行っても通用しない
と散々言われましたが、今落ち着いて考え直すと前の会社ほどの長残業がある会社の方が少ないのではないかと思います。
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第二新卒でホワイトまったり高給企業に転職した体験談
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いま働いている会社がブラック企業ではないかと考えている人へアドバイスです。
社内の人には相談するのは辞めておきましょう。会社の考えに染まっている人だけが会社に残れているのですから、あまり良い結果にはならないはずです。
相談相手として良いのは、労働環境が整った会社で働いている人です。
充実した社会人生活を送っている人と比べることで、いま自分が置かれている状況を冷静に見直すことをお勧めします。
私の場合は友人と話をしたことで 自社の異常さに 感づき、そして転職エージェントと相談することで確信を得ることができました。
転職活動は自分のスキルを見直したり、働いている会社の状態を客観的に見れるようになるので、必ずプラスに働くと思います。
仕事を続けるのも、仕事を辞めるのもあなたの人生です。周りの言葉に惑わされずに自分の人生を生きましょう。